電気分解（電解）と電池について、少しまとめ。
まず電池。
電池は化学反応によって＋から－に電流が流れ、－から＋に電子が流れるので、
電子 e–を放出する－（負極）では
→ ＋ e–
電子 e–が流入する＋（正極）では
＋ e– →
という電子の反応式になる。
－と＋を導線でつなぐと－から＋へ（導線を）電子 e–が流れる。電流は＋から－。
ダニエル電池（初期の電池）の場合、
－（負極） Zn → Zn2+ ＋ 2e–
＋（正極） Cu2+ + 2e– → Cu
電気分解は（基本的に）自然に起こる化学反応ではなく、電解液に浸した電極に電気を流した時に起こる化学反応。無理矢理化学反応。
※ －の電極は陰極、電池の－と接続
＋の電極は陽極、電池の＋と接続
－（陰極）に陽イオン（＋イオン）が引かれて、
陽イオン ＋ e– →
＋（陽極）に陰イオン（－イオン）が引かれて、
陰イオン → ＋ e–
という電子の反応式。
電解液＝塩化銅水溶液 CuCl2の電気分解の場合、
－（陰極） Cu2+ + 2e– → Cu ・・・ 銅が析出
＋（陽極） 2Cl– → Cl2 ＋ 2e– ・・・ 塩素が発生
電子に着目すると反応式は電池（放電）と逆。
電池の充電とは同じ。
なお、＋の電極（陽極）に銅 Cuなどを使うと電解液の電気分解以前に電極が溶ける。
Cu → Cu2+ ＋ 2e–
イオン化しにくい（イオン化傾向 小）白金 Ptの場合、溶けない。
当ページの電気分解は溶けない電極を使った場合。
電解液＝塩化ナトリウム水溶液（いわゆる食塩水） NaClの電気分解の場合、
水溶液中にNa+、Cl–、H+、OH–があって、
＋（陽極）は塩化銅水溶液の場合と同じく塩素 Cl2が発生。
－（陰極）はナトリウムイオン Na+が引かれるもののナトリウム Naは析出せず、代わりに水素イオン H+から水素 H2が発生。
－（陰極） 2H+ + 2e– → H2 ・・・ 水素が発生
＋（陽極） 2Cl– → Cl2 ＋ 2e– ・・・ 塩素が発生
この電気分解では水溶液に残って濃くなったNa+とOH–から水酸化ナトリウム（苛性ソーダ） NaOHが得られる。強アルカリ性。危険物。
ナトリウム Naやアルミニウム Alのようなイオン化しやすい（イオン化傾向 大）金属は水溶液だと析出しない。代わりに水素 H2が発生。
水溶液ではなく熱で溶融して電気分解すると析出する。
塩化ナトリウム NaClの溶融塩電解
－（陰極） Na+ + e– → Na
酸化アルミニウム Al2O3の溶融塩電解
－（陰極） Al3+ + 3e– → Al
電解液が水溶液の場合、＋（陽極）に水酸化物イオン OH–が引かれる。
H+ ＋ OH– ←→ H2O
電解液が塩化物の水溶液の場合、塩素 Cl2が発生するが、希硫酸 H2SO4、硫酸銅 CuSO4などの場合、硫酸イオン SO42-の代わりに水酸化物イオン OH–から酸素 O2が発生する。
＋（陽極） 2OH– → (1／2)O2 ＋ H2O ＋ 2e–
※ 便宜上分数も併記
通常、4OH– → O2 ＋ 2H2O ＋ 4e–
電子を受け取る－（陰極）が還元反応。
電子を失う＋（陽極）が酸化反応。
電池（放電）は
－（負極）が酸化反応。
＋（正極）が還元反応。
水の電気分解、燃料電池
水 H2Oの電気分解は、－（陰極）で水素発生、＋（陽極）で酸素発生。
ここまでの反応式であれば、
－（陰極） 2H+ + 2e– → H2
＋（陽極） 2OH– → (1／2)O2 ＋ H2O ＋ 2e–
H+ ＋ OH– ←→ H2Oで、
－（陰極） 2H2O + 2e– → H2 + 2OH–
＋（陽極） H2O → (1／2)O2 ＋ 2H+ ＋ 2e–
＝ 2H2O → O2 ＋ 4H+ ＋ 4e–
とも
※ 純水ではH+とOH–の電離はわずか
水に電解質（水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウムなど）を加えて電気を通しやすくして電気分解
－（陰極）は水素イオン還元もしくは水分子還元
＋（陽極）は水酸化物イオン酸化もしくは水分子酸化
※ 通常、＋O2が酸化反応、＋H2が還元反応なので、困惑するかもしれない
H2O → H2 ＋ (1／2)O2
＝ 2H2O → 2H2 ＋ O2
水素は化石燃料に代わる次世代エネルギーとして話題にのぼることが増えた。
水の電気分解は水素製造方法の１つ。
二酸化炭素 CO2は排出されない。
ただし、電気分解に使う電気（電力）が化石燃料由来の場合、間接的に二酸化炭素を排出していることになる。そのため風力発電や太陽光発電を利用して水素製造。
製造した水素は燃料として利用される。
燃料電池は水素と酸素の化学反応なので、水の電気分解と逆。
H2 ＋ (1／2)O2 → H2O
＝ 2H2 ＋ O2 → 2H2O
－（負極） H2 → 2H+ + 2e–
＋（正極） (1／2)O2 ＋ H2O ＋ 2e– → 2OH–
＝ O2 ＋ 2H2O ＋ 4e– → 4OH–
